【連載コラム③】エンゲージメントの数値が低いのは日本だけの問題か?

【調査を「読み解く」試み③】エンゲージメントの数値が低いのは日本だけの問題か?

◆このコラムの要約◆

ギャラップ社の調査では
ヨーロッパや近隣のアジアの国々も
実は日本と同程度の
エンゲージメントレベルで
低迷している

そうなのであれば
日本の数値の低さのみを
センセーショナルな結果として
受け止め反応するよりも
「なぜそのような調査結果になったのか」
を深掘りする姿勢のほうが
調査結果の活用として
価値があるのではないか?


◆サーベイフィードバックの視点◆

調査結果を
「順位」という数値の「序列」や
「当事者の結果数値」のみで
解釈しようとすると
問題の本質を見誤る可能性がある

■日本とアメリカ「以外」の各国の結果について

これまでのコラムで確認したとおり、日経新聞の記事ではギャラップ社のエンゲージメント調査の結果として、

1) 日本では「熱意あふれる社員」の割合が6%しかなく、アメリカの32%と比べ大幅に低いこと

2) 日本は139ヵ国中132位であること

3) 日本では「周囲に不満をまき散らしている無気力な社員」の割合が24%、「やる気のない社員」が70%に達していること

など日本を中心に結果の抜粋(※)が紹介されています。

一方、実際のギャラップ社のエンゲージメント調査レポートでは「State of the Global Workplace」という名称が表すとおり全世界の結果が集約されています。具体的には世界全体としての分析や世界を11の文化圏に分け計140の国・地域の結果数値データ(※)の記載などがあります。

ここで、日経新聞の記事上では表記されていなかっ日本とアメリカ以外の調査結果を把握するために各文化圏別の結果を確認すると、

北アメリカ圏(US/Canada)31%

が最も高く、以下、

ラテンアメリカ圏 27%
旧ソ連圏(Post-Soviet Eurasia)25%
東南アジア圏 19%
中南アフリカ圏(Sub-Saharan Africa)17%
東ヨーロッパ圏 15%
オセアニア圏(AZ/NZ)14%
中東・北アフリカ圏 14%
南アジア圏 14%
西ヨーロッパ圏 10%
東アジア圏 6%

という数値・序列になっています(レポート24ページ。日本語訳はOD Zukan)。

上記のとおり西ヨーロッパ圏、東アジア圏の数値が低い結果となっていて、さらにこの2つの文化圏の中から日本との差が小さい(差が5%以内の)国・地域を抽出すると

イギリス11%
スペイン 6%
フランス 6%
イタリア 5%
台湾 7%
韓国 7%
中国 6%
香港 5%

など、日本にとって比較的馴染みのある(ニュースなどで見聞きする機会の多い)アメリカ以外の国・地域について、

日本と同程度に
エンゲージメントレベルの
低い国・地域が複数存在している

ことが確認できます(レポート194~199ページ)。

「フランスが日本と
同じエンゲージメントレベル
なの?」

「中国・韓国・香港・台湾など
東アジア圏は軒並み
エンゲージメントレベルが低いの?」

「西欧諸国平均が10%ということは
実は日本より数%高いだけ
ということ?」

と、これまでの認識とは少し異なる反応を抱く方も少なくないではないでしょうか。

■調査結果を「自分事」として読み解こうとするスタンス

上記に関する情報や知識を得ても、

日本のエンゲージメントレベルが低かった

という結果自体は変わりません。しかし、もし日本だけが低いというわけでないのであれば

(日本は6%だ。139ヵ国中132位だ
→問題が山積みだ)

と、自身の数値や順位の序列の低さによって、悲嘆や問題提起一辺倒の反応になるのではなく

なぜ馴染みのある他国も
日本と同様に数値が低いのだろうか?

という視点でも捉え直してみることが、

調査結果を
「自分事」として理解しようとする視点

つまり

「サーベイフィードバック」
にて求められる視点

として不可欠なポイントであると考えます。

この「なぜ?」を深掘りする具体的な着眼点として、この後のコラムでも引き続きギャラップ社のエンゲージメント調査レポートを素材として、国別に違いが生じる背景を検討する分析プロセスを試みることにします。


※140ヵ国・地域の順位(調査の実施対象は155ヵ国・地域)の詳細は、ギャラップ社のエンゲージメント調査レポート「State of the Global Workplace」(英語版・コラム①②の中にリンクURLを記載)で確認できます(レポート194~199ページ)。なお日本の順位について、日経新聞の記事では132位となっていますが、OD Zukanが「State of the Global Workplace」より算出した順位では133位となり若干の差が生じています。また日経新聞上では、日本の「周囲に不満をまき散らしている無気力な社員」の割合が24%、「やる気のない社員」が70%、アメリカの「熱意あふれる社員」の割合が32%と記載されていますが、「State of the Global Workplace」上では、日本の「Actively disengaged」の数値は23%、「Not engaged」は71%、アメリカの「Engaged」は33%となっていました。算出元データや算出方法、国・地域の取り扱い方が若干異なっている可能性がある点をご了承ください。